チェロ教室に通い始めたのが、5月だった。
2週に一回くらいの練習量で、気づけば、半年以上が経過しようとしている。
練習は、相変わらず民謡、童謡が中心。練習も基礎が多い。
「まだまだ初心者、基礎を固めよう。」チェロ男はそう心に決めて、小学生がやるような楽典(楽譜の読み方の基礎)をコツコツ続けていた。
そんなレッスンを毎回繰り返し、秋も深まってきたある日。
「チェロ男さん、来年2月に発表会があるのですが、どうされますか?」
今まで、合同練習会的な集まりは仕事を理由に断り続けていた。しかも、今回は「発表会」今までのチェロ男だったら、秒で断る案件だ。
しかし、、今回は、何故か「やったろかな?」と心の中のリトルチェロ男が言い出した。
「やらずに後悔するくらいなら、やって後悔しようよ。」「人前に出れない自分の殻を破ろうよ」「you、やっちゃいなよ!!」
今思うと、完璧に魔が差したとしか言いようがない。
そして、先生にヘタレなところを見せたくないという気持ちもあったのだ。「この人、アラフォーなのにビビっちゃって、ダッサ~」と先生に思われたら嫌だな・・そんな思春期みたいな思いもあったのだ。
結論を先延ばしても意味がない。こういう時にいつも悩んで動けないのがパターンだ。
「やります」
一瞬、先生の目が見開いたのを見逃さなかった。完ぺきに驚いている。というか、たじろいている。おそらく、思いもよらなかった答えだったのだろう。「大抵、土日は仕事です。」と言っていたのだから。
「え、、仕事は大丈夫ですか?」
「はい、何とかします。(というか、土日が仕事なのは嘘です)」
「わかりました」と先生は言い、「課題曲を今年中に決めましょうね」とのことだった。
ここから、本番までは頭から発表会が消えたことはなかった。
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